2011年08月11日

富士ゼロックス事件(東京地裁 平成23年3月30日)

会社は解雇が難しい・・・いや解雇は出来ない。
そんなことが言われる近年ですが、それを感じさせる判決が出ています。

◇事件の背景


社内の規定により懲戒事由に該当する行いをした労働者が
自主退職を勧められ、退職届を提出。

しかし、その後その元労働者が退職の意思表示の錯誤無効を主張。
地位確認と賃金・賞与の支払を求めた。

◇裁判所の判断


自主退職しなければ懲戒解雇されると信じたことによってなされた
今回の退職の意思表示は錯誤により無効とされた。

判決確定後の賃金・賞与については認めなかったものの
平成21年12月から判決までの月額約39万円、
賞与(夏)約106万円(冬)約107万円の支払を認めた。


裁判所の判示からは、
・退職意思表示当時の年齢が高く、再就職が難しいことを考えると
 もし懲戒解雇にならないと認識できたならば自主退職しなかった
・労働者からの自主退職の申し出があった場合、使用者は
 労働者が錯誤(勘違い)に陥らないように説明そしたうえで
 改めて労働者の意思確認をするべき
という点が読み取れます。

地裁の判決とはいえ、若干疑問点も多い判決であり
参考となる判決といえるかどうか分かりません。

ただ、使用者にとっては
労働者の不利益を避ける為になした自主退職の取り扱いでさえも、
ひっくり返ってしまうという難しさが垣間見えます。
  


Posted by IT社労士 at 00:36Comments(0)判例