2010年09月14日

トラストシステム事件(東京地裁H19.6.22)

近年、仕事でのパソコン利用に関し
・持ち出したパソコン盗難
・データー持ち出し
・メール・インターネットの私的利用
といった、これまでの労務管理にはなかった問題が発生しています。

このうち、メールの私的利用が一つの争点になった事件があります。
さらにこの事件は「普通解雇」か「懲戒解雇」かという
契約解除に関する内容に関しても争点がある事案です。


◇事件の背景


課長待遇のシステムエンジニアとして6年間勤務した従業員に対し、
服務規律違反、職務専念義務違反として会社が労働契約の解消を行った。

その理由に関し
・6か月間に1700件あまりに及ぶ私的なメッセンジャーのやり取り
・その内容は就業時間後の飲み会の誘いプロ野球の話題、休日の過ごし方
・社内パソコンを利用して競馬の話題をやり取り
などを会社は主張。


◇裁判所の判断


行為に重大な問題を含むことは明らかだが・・・
・職場環境を良好とするためには、ある程度私的な会話等を交わすことが
 有益なことは経験上も明らか
・会社が利用限度について特段の指導や基準の設定をしたこともみられない
・取引先等と問題が生じたわけではない

といった理由から、服務規律違反、職務専念義務違反を解雇理由として
過大に評価することは疑問が大きいと判断した。


この事件に関しては会社の就業規則に「懲戒解雇」規定のみがあり、
「普通解雇」がなかったことで、原告(本人)は会社都合の解雇を
懲戒解雇と勘違いしていたという原告主張もありました。

この問題に限らず、退職に関し
・会社都合
・自己都合
というのは、再就職時の見られ方や失業手当の受給に関して大きな要素になります。

※会社都合であれば、失業手当はすぐ受給できますが自己都合では3か月間の待機後に
 はじめて支給が開始されます。



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Posted by IT社労士 at 10:57│Comments(0)判例
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